『ドラゴンクエストVI 幻の大地』に登場するテリー。
強さを求め、一人で行動する姿が印象的なキャラクターだ。
では、もしテリーの世界に高度なAIランキングが存在したらどうなるだろう。
剣の強さ。
戦闘勝率。
倒したモンスター。
攻撃力。
素早さ。
判断速度。
冒険者としての実績。
あらゆるデータをAIが分析し、世界中の戦士に毎日順位をつける。
そしてテリーが、その数字を絶対的に信じてしまったら?
昨日10位だった者が今日は8位。
仲間だったはずの人間が、自分より上位にいる。
するとテリーには、仲間まで「倒すべきライバル」に見えてくるかもしれない。
今回は、AIが人間の強さをランキング化した世界から、テリーの生き方を考えてみたい。
世界中の強さが毎日更新される
この世界には「冒険者AIランキング」が存在する。
世界中の戦闘データをAIが収集する。
誰がどんな敵と戦ったのか。
何回勝ったのか。
どれだけダメージを与えたのか。
どのくらい仲間を助けたのか。
装備は何か。
レベルはいくつか。
そしてAIが総合的な戦闘力を計算する。
例えば、
1位:9998
2位:9840
3位:9721
というように数値まで表示される。
誰が強いのか、誰でも分かる世界だ。
一見すると公平に見える。
肩書も関係ない。
自称「最強」も通用しない。
数字がすべてを証明してくれる。
強さを求めるテリーなら、このシステムに強く引かれる可能性がある。
テリーは毎朝ランキングを見る
目覚める。
剣を取る。
しかし修行を始める前に、テリーはランキングを確認する。
昨日は世界17位。
今日は18位。
「一人に抜かれた」
それだけで、その日の気分が変わる。
自分が弱くなったわけではない。
誰かが成長しただけかもしれない。
それでも順位は下がった。
テリーはいつも以上に修行する。
強いモンスターを探す。
危険な地域へ向かう。
勝てばポイントが増えるからだ。
やがて目的が変わってくる。
最初は、
「強くなりたい」
だった。
しかしいつの間にか、
「順位を上げたい」
になっている。
この二つは似ているようで違う。
AIが評価しない強さに価値を感じなくなる
ランキングには評価基準が必要だ。
戦闘勝利なら10ポイント。
強敵撃破なら50ポイント。
ダメージ量によって追加ポイント。
AIがそんな計算をしているとする。
するとテリーは考える。
「どうすれば効率よくポイントを稼げる?」
危険な人を助けてもランキングが上がらないなら、助けない。
弱い仲間を育ててもポイントにならないなら、一緒に行動しない。
町を守るより、強敵を一体倒したほうが評価されるなら強敵を探す。
AIが測定する数字に行動が最適化されていく。
しかし、本当の強さはそれだけだろうか。
ハッサンがランキング上位に来たら?
ここで面白い状況を作ってみる。
ハッサンがテリーより上位になった。
テリーは驚く。
自分は毎日修行している。
強敵とも戦っている。
なのにハッサンのほうが上だ。
理由をAIに聞く。
すると、
「仲間を守った回数」
「戦闘不能者を出さなかった割合」
「不利な戦闘での勝率」
などが評価されていた。
テリーは納得できない。
「それは強さなのか?」
しかしAIは、
「総合戦闘能力として評価しています」
と答える。
ここでテリーの中に新しい感情が生まれる。
ハッサンは仲間だったはずだ。
ところがランキングを見た瞬間、
「自分より上にいる男」
に変わってしまう。
主人公までライバルになる
さらに主人公が上位だったらどうなるか。
普通なら、一緒に世界を救う仲間だ。
主人公が強くなることはパーティーにとって良い。
しかしランキング中心で考えるテリーには違って見える。
主人公がレベルアップする。
順位が上がる。
テリーとの差が広がる。
すると、
「仲間が強くなってよかった」
ではなく、
「また差をつけられた」
と思う。
本来なら協力するほど有利になるRPGで、仲間の成長を喜べなくなる。
これはかなり危険な状態だ。
ミレーユまで数字で見るようになる
問題は戦闘だけではない。
ランキング文化が社会全体へ広がったら、人間関係まで数値化されるかもしれない。
戦闘力ランキング。
人気ランキング。
信頼度ランキング。
魔法能力ランキング。
仲間貢献度ランキング。
そしてテリーは、人を見るたびに順位を確認する。
ミレーユと再会しても、
「姉さん」
より先に、
「現在何位だ?」
と考えてしまう。
人間そのものを見るのではなく、AIがつけた数字を見る。
これはランキング社会の怖さだと思う。
AIが数字を出した瞬間、人間はその数字に意味があると感じやすい。
テリーはランキング攻略を始める
さらに進むと、テリーはAIランキングの仕組みを研究し始める。
どうすれば評価されるのか。
どのモンスターを倒すとポイント効率がいいのか。
どの装備ならAI評価が上がるのか。
どの地域なら勝率を維持できるのか。
これはもう「強くなる修行」ではない。
ランキングシステムの攻略だ。
例えば本当に強い敵と戦えば負ける可能性がある。
負ければ評価が下がる。
それなら少し弱い敵を大量に倒したほうが順位を維持できる。
もしそんな状態になれば、ランキング1位でも本当に最強とは限らなくなる。
数字を最適化した者が勝つからだ。
AIランキングにも偏りがある
AIは完全ではない。
何を「強さ」と定義するかは、誰かが決めなければならない。
攻撃力を重視するのか。
勝率なのか。
仲間を守る能力なのか。
逃げる判断も評価するのか。
運の要素をどう扱うのか。
例えばテリーが非常に危険な敵に挑戦して負けた。
一方、別の戦士は安全な敵だけを倒して100連勝した。
数字だけなら後者が高くなるかもしれない。
しかし、どちらが本当に強いのか。
簡単には決められない。
AIランキングは客観的に見えて、実は評価基準という価値観を持っている。
ランキング圏外の老人に負ける
ここで物語の転換点を作る。
テリーがランキング1位になったとする。
ついに世界最強。
誰も自分より上にはいない。
テリーは満足する。
そこへ一人の老人が現れる。
ランキングを調べる。
圏外。
戦闘データなし。
実績なし。
テリーは相手にしない。
ところが模擬戦をすると、一撃も当てられない。
老人はテリーの動きを完全に読んでいる。
テリーが驚いて聞く。
「なぜランキングにいない?」
老人は答える。
「登録していないからだ」
ここでテリーの世界観が崩れる。
AIが知らない強者が存在した。
ランキングに載っていない=弱い
ではなかったのだ。
AIが世界のすべてを知っているわけではない
AIランキングがどれほど高度でも、データがなければ評価できない。
記録されていない戦闘。
数字にならない経験。
誰にも見られていない修行。
戦わないという判断。
仲間から信頼される力。
危険を事前に避ける能力。
これらを完全に測定することは難しい。
テリーは初めて、
「AIが知らない強さ」
について考え始める。
これは彼にとって大きな変化だ。
仲間を助けても順位が下がる戦い
その後、主人公たちが強敵と戦う。
テリーも参加する。
途中で選択を迫られる。
敵を攻撃すれば大量ポイントを獲得できる。
しかし仲間が危険な状態になっている。
仲間を助ければ攻撃の機会を失う。
ランキングも下がる可能性がある。
以前のテリーなら攻撃したかもしれない。
しかし今度は仲間を助ける。
戦闘終了後、AIから通知が届く。
ランキング:1位→3位
テリーは画面を見る。
以前なら怒っていただろう。
だが今回は違う。
仲間は生きている。
そしてテリーは気づく。
「3位でも別にいい」
これはランキング社会から抜け出す最初の瞬間になる。
ランキングを消したテリー
最後にテリーはランキング表示をオフにする。
世界ランキング。
戦闘力。
他人との比較。
すべて見ない。
最初は不安になる。
今、自分が何位なのか分からない。
昨日より強くなったのかも数値では確認できない。
しかし代わりに、自分自身へ問い始める。
昨日できなかった技ができたか。
強敵を前に冷静でいられたか。
仲間を守れたか。
間違った判断を認められたか。
数字ではなく、自分の基準で成長を見る。
テリーにとって、これは剣の修行以上に難しい修行かもしれない。
現代にもランキングはたくさんある
この設定はファンタジーだけの話でもない。
現代にも数字はあふれている。
年収。
フォロワー数。
再生回数。
売上。
偏差値。
順位。
評価点。
数字は便利だ。
比較できる。
目標にもなる。
しかし数字が分かりやすいからこそ、
「数字が高い人=人間として上」
と錯覚する危険もある。
AIが進化すれば、これまで数値化されていなかった能力まで点数にされる可能性がある。
そのとき、テリーのような世界が完全な空想とは言えなくなるかもしれない。
AIは順位を出せても「何を目指すべきか」は決められない
AIは大量のデータを比較するのが得意だ。
誰の攻撃力が高い。
誰の勝率が高い。
誰が効率よく成長した。
そうした分析はできる。
しかし、
「人生で何を強さと呼ぶのか」
は別問題だ。
一人で勝つ力なのか。
仲間を守る力なのか。
負けても挑戦することなのか。
争わないことなのか。
そこには人間側の価値観が入る。
だからAIランキングを使うこと自体が悪いわけではない。
問題なのは、
ランキングを現実そのものだと思い込むこと
なのだろう。
まとめ|テリーが倒すべき最大のライバルはランキングだった
AIランキングだけを信じたテリーは、世界中の人間を順位で見るようになった。
ハッサンもライバル。
主人公もライバル。
そしてミレーユさえ、数字で評価する対象になっていく。
順位を上げるために戦い、ランキングに最適化された行動を選ぶ。
しかし、ランキング圏外の強者との出会いによって気づく。
AIが測れる強さは、強さの一部分にすぎない。
そして最後には、順位を下げてでも仲間を助ける。
その瞬間、テリーはランキングでは弱くなったかもしれない。
だがキャラクターとしては、以前よりずっと強くなったとも言える。
AIが何でも数値化する未来で、本当に必要になるのは、AIより高い点数を取ることではないのかもしれない。
「自分は何を強さと呼ぶのか」を、自分自身で決めること。
もしテリーがAIランキングだけを信じる世界に生きていたなら、最後に戦う最大の敵は魔王ではない。
自分より上に表示された誰かでもない。
「1位でなければ価値がない」と信じてしまった自分自身なのかもしれない。

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