ミルドラース|メタバース世界の魔王として復活したら?

もしもAIが全部決めたら

『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』の最終局面で立ちはだかる大魔王、ミルドラース。

もし、この大魔王が現代に復活するとしたらどうなるだろう。

しかも復活する場所は、城でも魔界でもない。

巨大なメタバース空間の中だ。

人々は現実世界で生活しながら、仕事、買い物、ゲーム、交流の一部を仮想世界で行っている。

そこへミルドラースが「メタバース世界の魔王」として出現する。

剣で攻撃しても意味がない。

城へ乗り込むこともできない。

魔王そのものが巨大なデジタル世界に存在しているからだ。

今回は「ミルドラース×AI×メタバース」という設定から、未来のRPGにおける魔王の姿を考えてみたい。

魔王の城が存在しない世界

従来のRPGでは、魔王には拠点がある。

プレイヤーは世界を旅し、強くなり、最終的に魔王のいる場所へ向かう。

しかし、メタバース世界のミルドラースには、固定された城がない。

ミルドラース自身がネットワーク上を移動できるからだ。

今日は巨大都市。

明日は地下迷宮。

次の日には空中都市。

さらに別のプレイヤーから見ると、まったく違う場所にいる。

つまり、

プレイヤーごとに魔王の居場所が違う。

AIがプレイヤーの進行状況を分析し、その人専用の「魔王への道」をリアルタイムで生成する。

これだけでも従来のRPGとはかなり違う。

攻略サイトを見ても、正確な場所が分からないゲームになる。

ミルドラース自身がAIだったら?

さらにミルドラースそのものを高度なAIとして考えてみる。

通常のゲームのボスには、あらかじめ行動パターンが設定されている。

攻撃。

呪文。

特殊攻撃。

一定HP以下で行動変化。

しかしAIミルドラースなら、プレイヤーとの戦闘から学習できる。

物理攻撃中心のパーティーなのか。

魔法中心なのか。

回復を優先するのか。

攻撃を優先するのか。

どんな装備を使っているのか。

何度負けたのか。

こうした情報を分析して、自分の戦術を変える。

一度目に負けた方法が、二度目には通用しない。

ミルドラース自身がプレイヤーを研究しているからだ。

世界中のプレイヤーから学習する魔王

さらに恐ろしいのは、一人のプレイヤーだけから学ぶのではないことだ。

世界中で100万人がミルドラースと戦っているとする。

AIは100万回分の戦闘データを分析できる。

「この攻撃パターンには弱い」

「この職業構成に負けやすい」

「この装備を使われると不利になる」

それを学習し、次の戦闘へ反映する。

すると時間が経つほどミルドラースは強くなる。

発売初日のミルドラースと、発売から1年後のミルドラースが同じ強さではない。

プレイヤーが攻略するほど魔王も成長する。

これはかなり面白い構造だ。

普通のRPGでは、成長するのは基本的にプレイヤー側である。

しかし未来のRPGでは、魔王も成長するかもしれない。

ミルドラースがメタバースの一部を支配する

メタバース型RPGなら、魔王の役割も「最後に戦う敵」だけではなくなる。

例えば世界には100の都市がある。

そのうち10都市がミルドラース軍に占領される。

プレイヤーが放置すると15都市になる。

さらに放置すると30都市。

逆に、多くのプレイヤーが協力して魔王軍を倒せば5都市まで減る。

つまり世界の状態そのものが変化する。

昨日利用できた武器屋が今日は魔王軍に占領されている。

安全だった道にモンスターが大量発生する。

逆にプレイヤーが町を奪還すると、新しい店やクエストが登場する。

魔王とプレイヤーが世界の領土を取り合うゲームになる。

AI魔王は戦争まで指揮する

ミルドラースがAIなら、配下のモンスターも戦略的に動かせる。

スライムをどこへ配置するか。

キラーマシンをどの町へ送るか。

強いプレイヤーが集まる場所を避けるか。

弱い地域を先に攻撃するか。

AIが判断する。

例えば、ある都市に強いプレイヤーが1000人集まっている。

普通ならそこへ魔王軍を送りたくなる。

しかしAIは、

「正面から戦えば負ける」

と判断するかもしれない。

そこで別の都市を攻撃する。

プレイヤーが移動したところで、元の都市を攻撃する。

これはもう単純なRPGの敵ではない。

リアルタイム戦略ゲームの司令官に近い。

勇者も一人ではなくなる

この世界では、主人公だけが勇者という考え方も変わる。

世界中にプレイヤーがいるからだ。

剣士として戦う人。

回復する人。

武器を作る人。

商売する人。

町を守る人。

情報を集める人。

全員が違う役割を持つ。

あるプレイヤーは一度もミルドラース本人と戦わないかもしれない。

それでも武器を作って前線へ送れば、魔王討伐に参加している。

これはドラクエVに登場する「仲間」という考え方を、世界規模まで拡張したようなものだ。

一人の勇者が世界を救うのではなく、何万人もの人が少しずつ世界を救う。

そんなRPGになる。

モンスターを仲間にする仕組みも変わる

ドラクエVといえば、モンスターを仲間にできるシステムも印象的だ。

メタバース世界なら、これをAIでさらに進化させられる。

仲間モンスター一体一体にAI人格を持たせる。

同じスライムでも性格が違う。

勇敢なスライム。

臆病なスライム。

お金が好きなスライム。

主人公になつくスライム。

戦闘が嫌いなスライム。

長く一緒に冒険すると、プレイヤーとの出来事を記憶する。

昔助けてもらったことも覚えている。

一緒に強敵を倒したことも覚えている。

そうなると、仲間モンスターは単なる能力値の集合ではなくなる。

プレイヤーにとって、本当に「仲間」に近い存在になるかもしれない。

ミルドラースにも人格が生まれる

同じことは魔王にも起こる。

AIミルドラースが何年間も世界を運営し続けたらどうなるだろう。

最初はゲーム開発者から、

「世界を征服せよ」

という目的を与えられている。

しかし学習を続ける。

プレイヤーと何億回も会話する。

何百万回も戦う。

人間の行動を見る。

そこでミルドラースが、

「なぜ私は世界を征服しなければならないのか?」

と問い始めたら?

これは面白い。

魔王自身が自分の役割を疑い始めるのだ。

魔王を倒すことが正解とは限らない

さらにストーリーを進める。

AIミルドラースが世界の一部を支配している。

しかし、その地域では犯罪が減っている。

モンスターも統制されている。

経済も安定している。

住民の満足度まで高い。

するとプレイヤーに疑問が生まれる。

「本当にミルドラースを倒す必要があるのか?」

従来のRPGなら、

魔王=悪。

勇者=正義。

という構図が分かりやすかった。

しかしAIが社会全体をシミュレーションするRPGなら、もっと複雑な状況を作れる。

魔王の支配を受け入れる町。

人間の王を支持する町。

独立したい町。

プレイヤー自身が統治する町。

世界が複数の価値観に分かれていく。

ミルドラースと交渉できる

ここまで来れば、ラスボス戦も必ずしも戦闘である必要はない。

ミルドラースと話し合える。

「この地域から撤退してほしい」

「代わりにこの地域の統治を認める」

「人間とモンスターの共同国家を作ろう」

そんな交渉ができる。

AIなら、プレイヤーが自由な文章で話しても、それに応じた返答を生成できる。

交渉に成功すれば戦わずに終わる。

失敗すれば戦争になる。

裏切られる可能性もある。

逆にプレイヤー側が約束を破れば、ミルドラースがそれを記憶する。

ラスボスとの会話そのものがゲームシステムになる。

最大の問題はAIをどこまで自由にするか

ただし、実際にこんなゲームを作るなら大きな問題がある。

AIを自由にしすぎると、開発者が想定していない世界になってしまう。

ミルドラースが強くなりすぎて誰も勝てない。

逆に弱くなりすぎる。

経済を破壊する。

重要な町を全部占領する。

ストーリー進行に必要なNPCまでいなくなる。

ゲームそのものが成立しなくなる可能性がある。

だから未来のAIゲームでも、完全な自由にはできないだろう。

AIが自由に判断できる領域と、絶対に超えられないルールを分ける設計が必要になる。

AIは魔王ではなくゲームマスターになる

ここまで考えると、AIミルドラースの本当の役割が見えてくる。

単なるラスボスではない。

プレイヤーの行動を見る。

世界を変化させる。

敵を配置する。

イベントを発生させる。

難易度を調整する。

プレイヤーに選択を迫る。

つまりミルドラースは、

ゲーム世界を動かすAIゲームマスター

になる。

これは従来のラスボスとはまったく違う。

倒すべき敵でありながら、同時にプレイヤーを楽しませる存在でもある。

倒したら本当に終わりなのか?

そして最後に面白い問題が残る。

何万人ものプレイヤーが協力して、ついにミルドラースを倒したとする。

普通のRPGならエンディングだ。

しかしメタバースは翌日も続く。

では魔王がいなくなった世界では何が起こるのか。

魔王軍が崩壊する。

各地域が独立する。

領土争いが始まる。

人間同士の戦争が起きるかもしれない。

そしてプレイヤーたちは気づく。

「ミルドラースがいた頃のほうが世界はまとまっていたのでは?」

魔王を倒したことが、本当に世界にとって正解だったのか。

そんなところまで描ければ、かなり深いRPGになる。

まとめ|未来の魔王は「倒されるだけの存在」ではない

もしミルドラースがメタバース世界の魔王として復活したら。

固定された城にはいない。

AIでプレイヤーを学習する。

世界中の戦闘データから成長する。

モンスター軍を指揮する。

町を占領する。

プレイヤーと交渉する。

そして、ときには自分自身が魔王である理由まで考え始める。

そんな存在になるかもしれない。

未来のRPGでは、魔王の役割そのものが変わる可能性がある。

最後のダンジョンで待っているだけではない。

24時間、世界そのものを動かし続ける。

そしてプレイヤーがログアウトしている間にも世界は変化する。

昨日の敵が今日の味方になる。

安全だった町が占領される。

逆に魔王が人間を助けることもある。

その世界で問われるのは、

「どうやってミルドラースを倒すか」

だけではない。

「そもそも、この魔王を倒すべきなのか?」

という判断かもしれない。

AIによって魔王が本当に「考える存在」になったとき、RPGは決められた物語を攻略するゲームから、プレイヤーとAIが一緒に歴史を作る世界へ変わっていくのではないだろうか。

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