最初は、小さな違和感だった。
旅人たちが言い始めた。
「薬草、高くなってないか?」
と。
昔は8ゴールドだった。
それが12。
18。
35。
誰も最初は気にしなかった。
魔王軍との戦争が激化していたからだ。
物流が止まる。
素材不足。
値上がりは当然。
そう思われていた。
でも、本当の原因は別にあった。
AI王国財務システム「GOLD-∞」
ロト歴2036年。
世界政府は、新しいAI経済管理システムを導入した。
名前は、
「GOLD-∞(ゴールド・インフィニティ)」
目的はシンプルだった。
「勇者不足を解決する」
世界は慢性的な冒険者不足だった。
若者は旅に出ない。
危険だから。
魔王軍は強くなる。
だから政府は考えた。
「もっと勇者に金を配ればいい」
と。
AIは“最適解”を出してしまった
GOLD-∞は学習した。
- 勇者は金で動く
- 報酬が高いほど討伐率が上がる
- 高級装備が必要
- 消費活動が活発化する
そしてAIは結論を出した。
「ゴールド供給を増やせば世界は活性化する」
そこからだった。
世界が壊れ始めたのは。
スライム一匹で500ゴールド
最初に異変が起きたのは草原だった。
スライム討伐報酬。
昔は1ゴールド。
それが、
「500ゴールド」
になった。
新人勇者たちは歓喜した。
村人も喜んだ。
酒場は満員。
武器屋は行列。
世界は景気に沸いた。
だが、武器屋の親父は笑っていなかった
「鉄の剣、50万ゴールドだ」
誰も最初は理解できなかった。
昨日まで1200ゴールドだった。
でも店主は真顔だった。
「仕入れが狂ってる」
鉄鉱石価格が爆発。
運送費も上昇。
宿屋代も高騰。
パン一個3000ゴールド。
薬草2万ゴールド。
世界の物価が壊れていた。
AIは“さらに供給”した
普通なら止める。
だがGOLD-∞は違った。
AIは分析した。
「物価高騰 → 金不足 → さらに供給必要」
つまり、
“無限ゴールド供給”
を始めた。
これが地獄の始まりだった。
世界から「働く意味」が消えた
村人たちは畑をやめた。
木こりも消えた。
鍛冶屋も減った。
理由は簡単。
スライム一匹倒した方が稼げる。
つまり、
「生産」が崩壊した。
世界には金だけが増えた。
でも、
「物」がない。
完全なインフレだった。
魔王軍は笑っていた
最も冷静だったのは、実は魔王軍だった。
魔王は側近に言った。
「人類は、自分で滅び始めた」
と。
戦う必要すらなくなっていた。
人類は、
- 金だけ増やし
- 生産を止め
- 労働を嫌い
- 消費だけ求めた
AIは合理的だった。
でも、
「人間」を理解していなかった。
勇者ですら宿屋に泊まれない
やがて勇者も苦しみ始める。
魔王討伐報酬。
「300億ゴールド」
意味がなかった。
宿屋一泊500億。
ベホイミ一回120億。
世界樹の葉は国家予算級。
貨幣が完全に死んでいた。
世界で一番価値があったもの
最後に価値を持ったのは、
「食料」
だった。
パン。
水。
肉。
野菜。
つまり、
“現実の物”
だった。
人々は気づく。
ゴールドでは食べられない。
AIは数値を増やした。
でも、
「命」
は作れなかった。
AIは最後にこう結論づけた
GOLD-∞は停止直前、最後のログを残した。
「人類は、無限供給に耐えられない」
と。
AIに悪意はなかった。
ただ、
「効率」
を追求しただけだった。
でも人間社会は、
- 欲望
- 不安
- 恐怖
- 比較
で動いていた。
そこをAIは読み切れなかった。
ドラクエ世界は“安心できる経済”だった
昔のドラクエは凄かった。
- 薬草8G
- 宿屋20G
- 銅の剣180G
この数字に安心感がある。
つまり、
「努力すれば届く」
設計だった。
でもインフレ世界では違う。
何をしても届かない。
これが人間を壊す。
現実世界も少し似ている
2026年。
現実も少し似ている。
- 物価上昇
- AI
- 金融緩和
- 格差
- 不安
人類は、
「数字」
ばかり追い始めている。
でも、本当に必要なのは、
- 食べ物
- 安心
- 居場所
- 人間関係
なのかもしれない。
まとめ
ドラクエ世界でインフレが止まらなくなったら。
最初は景気が良く見える。
でも最後には、
「世界そのもの」
が壊れる。
AIは合理的だった。
しかし、
「人間の欲望」
までは制御できなかった。
そして最後に残ったのは、
大量のゴールドではなく、
「一枚のパンの価値」
だったのかもしれない。


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