戦わない商人を最後までパーティーに入れたら?AIで冒険をシミュレーションしてみた

AIキャラクター設計

RPGの仲間といえば、普通は「戦えること」が重要になる。

攻撃力の高い戦士、回復できる僧侶、強力な呪文を使える魔法使い。敵を倒して進んでいく以上、戦闘能力の高い仲間ほど頼りになる。

では逆に、一切戦わない商人を最初から最後までパーティーに入れたらどうなるのか。

攻撃しない。

呪文も使わない。

敵にダメージを与える特技もない。

そんな仲間に最後まで一枠を使う意味はあるのだろうか。

今回はドラクエ風の世界を舞台に、AIで架空の商人キャラクターを設定し、魔王討伐まで同行させるIFを考えてみた。

戦闘能力ゼロの商人「マルク」

今回AIで設定した商人の名前はマルク。

38歳。港町セレナで小さな道具屋を経営していた男性だ。

剣は使えない。

攻撃呪文も覚えない。

力も素早さも一般人並み。

最大の特徴は、どんな状況でも自分から敵を攻撃しないことだ。

勇者アルトが、

「一緒に魔王を倒してほしい」

と頼んでも、マルクはこう答える。

「私は戦えません。でも、旅を続けるための仕事ならできます」

戦闘だけを考えれば、かなり厳しい仲間である。

それでもアルトはマルクを仲間にした。

パーティーは勇者アルト、女戦士リナ、僧侶セリア、そして商人マルクの4人で出発する。

序盤では完全にお荷物だった

最初の草原。

スライム系の魔物が3匹現れた。

アルトが攻撃する。

リナも剣を振る。

セリアは必要に応じて回復する。

しかし、マルクは何もしない。

戦闘が終わるまで後方にいるだけだ。

次の戦闘でも同じ。

その次も同じだった。

リナはついに不満を口にする。

「本当にこの人を連れていくの?」

当然の疑問だ。

4人パーティーなのに、実質3人で戦っている。

AIシミュレーションでも、序盤の戦闘時間はマルクがいない通常パーティーより長くなった。

ここだけを見るなら、マルクを外して戦士や魔法使いを入れた方が圧倒的に合理的だった。

最初の変化は「薬草」だった

ところが、旅が長くなるにつれて状況が変わってくる。

マルクは戦闘には参加しないが、商人として道具の管理を始めた。

誰が薬草を何個持つのか。

毒消し草を何個買うのか。

宿屋までどのくらい歩くのか。

次の町までに必要な食料はいくらか。

これまでアルトたちは、道具がなくなったら買えばいいと考えていた。

しかしマルクは違った。

「次の洞窟は長いそうです。薬草をあと8個増やしましょう」

その判断によって、パーティーは洞窟の途中で引き返さずに済んだ。

一度の戦闘では役に立たない。

しかし、冒険全体では少しずつ効いてくる。

これが商人マルクの強さだった。

武器を「買わない」という能力

次の町で、リナは新しい剣を欲しがった。

攻撃力は現在の剣より高い。

普通なら買い替えるところだ。

しかしマルクは止めた。

「次の町まで待った方がいい」

リナは不満そうだったが、従った。

そして次の町へ到着すると、ほぼ同じ価格でさらに性能の良い剣が売られていた。

マルクは周辺の商人から相場を聞いていたのだ。

彼は戦闘でゴールドを稼ぐことはできない。

しかし、無駄なゴールドを使わせない。

さらに不要になった装備品を高く買ってくれる店を探し、交渉まで行う。

気づけば、同じ冒険日数でもアルトたちの所持金には余裕が生まれていた。

戦士が敵を倒す能力を持つなら、商人は「次の戦いを有利にする能力」を持っているとも考えられる。

商人だから入れる場所があった

旅の中盤、パーティーは城塞都市グランへ到着する。

しかし魔王軍との戦争によって、外部の冒険者は警戒されていた。

勇者を名乗っても城へ入れてもらえない。

そこでマルクが商人ギルドの証明書を見せる。

「港町セレナのマルクです。こちらは護衛です」

勇者が商人の護衛になった瞬間だった。

マルクの信用によって一行は町へ入り、武器商人から魔王軍の輸送路について情報を得る。

ここでAIが面白い判定を出した。

戦闘能力のないキャラクターだからこそ、戦闘以外のルートが開く。

強いキャラクターだけでは解決できない問題が出てきたのだ。

雑魚モンスターとも取引を始める

さらにマルクは、敵だからといって必ず戦う必要はないと考えた。

山道で小型モンスターのゴブルたちに囲まれたときも、武器を構えなかった。

ゴブルたちが欲しがっているのが食料だと気づき、保存食と引き換えに安全な道を教えてもらう。

リナは驚く。

「倒した方が早くない?」

マルクは答える。

「今日倒しても、明日また別のゴブルが来ます」

この出会いをきっかけに、ゴブルの一匹であるペコが、ときどきパーティーへ情報を持ってくるようになる。

名もなき雑魚敵だったペコが、冒険後半では重要な情報源になる。

ボス戦ではやっぱり何もしない

もちろん、弱点も消えない。

巨大な魔獣ガルドンとの戦い。

アルト、リナ、セリアは必死に戦う。

しかしマルクは攻撃しない。

ボス戦では明らかに3人の負担が大きい。

セリアのMPも早く減る。

一度は全滅寸前まで追い込まれた。

「やっぱり4人目が魔法使いなら……」

アルトもそう考える。

マルク自身も理解していた。

「私は、この戦いでは役に立てません」

何でもできる万能キャラクターにはしない。

AIシミュレーションでは、この弱点を最後まで残した。

だからこそ商人というキャラクターの特徴が強くなる。

それでも誰もマルクを外さなかった

旅を始めて100日。

アルトは仲間たちに尋ねる。

「4人目を戦える仲間に替えるか?」

最初に不満を言っていたリナが答えた。

「今さら無理でしょ」

薬草の管理。

装備品の購入。

宿屋の交渉。

情報収集。

荷物の整理。

町との交渉。

そして旅の資金管理。

気づけば、戦闘以外のほとんどをマルクが支えていた。

セリアも言う。

「マルクさんがいなくなったら、たぶん私たち、三日でお金なくすよ」

マルクは笑った。

戦闘力ゼロなのに、パーティーから外せなくなっていた。

魔王城でも剣を抜かなかった

そして最終地点、魔王城。

最後の戦いでもマルクは攻撃しなかった。

魔王ヴァルガスと戦うのはアルト、リナ、セリアの3人。

マルクは後方に残る。

しかし、ここまで来られた理由の中には確実に彼の存在があった。

無駄な戦闘を避けた。

資金を残した。

必要な装備を揃えた。

町の人々との信用を作った。

雑魚モンスターからも情報を集めた。

戦闘だけを切り取れば、マルクの与えたダメージは最後までゼロだった。

それでも、魔王を倒した瞬間、アルトは最初にマルクを見た。

「終わったぞ」

マルクは静かに答える。

「では、帰りの旅費を計算しましょう」

最後まで商人だった。

強さは攻撃力だけではなかった

今回のAIシミュレーションで面白かったのは、戦わないキャラクターでも役割を徹底すれば存在感を作れることだった。

戦士は敵を倒す。

僧侶は仲間を回復する。

そして商人は、冒険そのものを継続可能にする。

もしゲームとして考えるなら、マルクを入れることで戦闘難易度は上がる。

その代わり、購入価格、売却価格、アイテム所持数、情報収集、交渉イベントなどで大きなメリットを得られる設計にできる。

「戦えないから弱い」ではなく、

「戦わないから別の能力を極端に強くする」

というキャラクター設計だ。

AIでキャラクターを考えるとき、つい攻撃力や呪文の強さを競わせてしまう。

しかし、マルクのようなキャラクターが一人いるだけで、冒険は単なる戦闘の連続ではなくなる。

勇者が世界を救ったとしても、その勇者を魔王城まで連れていく人間が必要なのかもしれない。

戦闘回数0。

与えたダメージ0。

それでも最後まで外せなかった仲間。

戦わない商人マルクは、ある意味では最もRPGらしい仲間なのかもしれない。

※この記事は「ドラクエ×AI」をテーマにした架空のIF考察です。マルク、アルト、リナ、セリア、ゴブル、ペコ、ガルドン、ヴァルガスなどは、本記事用に設定したオリジナルキャラクター・モンスターです。

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